大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(ネ)1620号 判決

なお控訴人は、株式会社小沼がその控訴人に対する債務を弁済しないのに、同会社の代表取締役である被控訴人個人が控訴人に対して本件約束手形金の弁済を求めるのはいちぢるしく信義に反する行為である、と主張するけれども、株式会社小沼と被控訴人とはほんらい別個の権利義務の主体であるのであるから、たとい控訴人主張のような事情にあつたからといつてそれがため被控訴人の控訴人に対する権利の行使が信義に反するものであるということができない。

次に被控訴人の預け金返還請求について判断する。

被控訴人が昭和二十八年十二月一日控訴人に対し前記甲第一号証の一ないし三の約束手形と引換に金百五十万円を貸し付け、その利息を月三分と定めたことは、控訴人の明らかに争わないところであつて、これを自白したものとみなすべきものである。しかして被控訴人は、控訴人から昭和二十八年十二月分から昭和三十年九月分まで毎月金四万五千円の利息の支払を受けた上、これを控訴人に寄託した、と主張するので、証拠を証べるのに、成立に争のない甲第三号証の一ないし二十二、原審証人石山貫龍の証言、原審における原告(被控訴人)、被告(控訴人)各本人尋問の結果を綜合すれば、被控訴人と控訴人との間に、前段認定の金百五十万円の貸金の利息、月三分、金四万五千円を、右貸金の仲介をした石山貫龍名義で、株式会社日本勧業銀行小伝馬町支店に三年満期の積立預金にしておくという約定が成立したが、その後控訴人は、右銀行に、右四万五千円のうち二万五千七百円を控訴人長男浩一名義の三年満期金百万円の積立預金の預入金として、うち金一万二千八百五十円を石山貫龍名義の三年満期五十万円の積立預金の預入金として、その余を控訴人名義の普通預金として預け入れ、毎月はじめ右預入をなした後、これを証明する預金通帳と共に、控訴人作成名義被控訴人あての預り書(甲第三号証の一ないし二十二)を被控訴人方に持参し、預金通帳を被控訴人に示した上、これを控訴人方に持ち帰えり、預り書だけを被控訴人に交付しておいたこと、かくして控訴人の右銀行に預け入れた額は昭和二十八年十二月一日から昭和三十年八月二日まで合計九十九万円に達し、右金額に相当する金員の預り書が控訴人から被控訴人に交付されたが、控訴人が右銀行に対する預金通帳に使用した印顆は全部控訴人の保管するものであり、印顆も通帳もともに控訴人の手許に保管し、満期の時に右預金を利息と共に被控訴人に返還することとしたが、被控訴人に必要が生じた場合は、被控訴人の請求により何時でもこれを被控訴人に返還することを約したこと、しかるに控訴人は、昭和三十年十月四日被控訴人の承諾を得ずに、右三口の積立預金、普通預金を解約して、預金を引き出してしまつたことを認めることができる。

右認定の事実関係によれば、控訴人が被控訴人に支払う利息は、終始控訴人がこれを任意に引き出し使用し得る関係において預金されており、被控訴人の占有、ないしは被控訴人の処分し得る関係におかれなかつたことが明らかであるから、右利息が一たん被控訴人に支払われたものとは認め難く、被控訴人が第二次的に主張するように被控訴人が支払を受けるべき利息をもつて消費寄託の目的とした準消費寄託契約が成立したものというべきである。

(大江 本田 猪俣)

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